183日のお見合い結婚~御曹司は新妻への溺甘な欲情を抑えない~
過去のことなのに、まるで夢が叶ったような不思議な嬉しさが込み上げる。

「すごいな、俺たち。運命という言葉を、強く感じている」

そう言った柊哉が、真衣を引き寄せ胸に抱いた。

「柊哉、ここは人目につくから、駄目……」

「少しだけ。このままお礼を言わせてくれ」

鼓動が振り切れそうな真衣の耳に、聞き心地のいい声が忍び込む。

子供の頃の柊哉は気持ちが後ろ向きになりそうな時、あの楽しかった夏の思い出を引っ張り出して、心を慰めていたそうだ。

さすがに中学生にもなれば、ほとんど思い出すことはなくなったそうだが、少なくとも小学生の頃までは、えりかは彼にとって大切な存在であったという。

「真衣、ありがとう。あの夏にお前に出会えたから、心が壊れずにすんだのかもしれない」

「大袈裟だよ。でも、そう言ってもらえると私も嬉しい……」

「俺の初恋は、お前だったんだな」

「えっ?」

出かける前の柊哉は確か、『あの場限りの出会いに恋もクソもない』と言っていた。

初恋を否定していたことを指摘すれば、体を離した彼が照れくさそうにそっぽを向いて言う。

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