183日のお見合い結婚~御曹司は新妻への溺甘な欲情を抑えない~
和美が指をさしたのは足元で、真新しい秋色のパンプスを履いていた。

「買ったの? 素敵だね。和美によく似合ってる」

「ありがと。でも早速、靴擦れして。数日履けば、革が柔らかくなるよね。それより――」

和美が急に顔を曇らせた。

目を瞬かせている真衣に、心配そうに問う。

「肩落として歩いてたように見えたけど、なんかあった?」

「え、猫背になってた? 気をつける。別になにもないよ。落ち込んでいるわけじゃないから心配しないで」

「それならいいけど。契約切れ間近で傷心なのかと思っちゃった」

「それは……覚悟してるから大丈夫」

自分らしい強気な笑みを作って見せたのに、和美が眉尻を下げて残念がる。

「もったいないな。少しはお互いに気があるんでしょ? 契約延長を申し出てみたら。いつかは恋になるかもしれないよ」

「恋にならないかもしれないよ。一回延長すると、また次もって、ずるずると意味のない同居を続けてしまいそう。契約満了で、気持ちよく終わりにしないと」

「潔くて真衣らしい考え方。少女漫画が好きなのに、よくあるヒロインのようにうじうじ悩まないよね」

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