183日のお見合い結婚~御曹司は新妻への溺甘な欲情を抑えない~
「和美、最近忙しそうだね。プライベートが充実しているんだ。いいね」

「真衣ほどじゃないよ」

階段から、企画部のある三階のフロアへと足を進める。

亮の相談も気になるし、それよりも今朝のキスや三日後の離婚が頭から離れず、心が落ち着かない。

心情的には鰯雲を眺めながらゆっくり悩みたいところだが、給料をもらっている身なので、ここからは仕事のみに意識を向けなければと、真衣は自分を戒めた。


開発チームのミーティングに、他社製品の分析研究と、資料作り。

営業部のようなわかりやすい成果を感じられない企画部の業務を淡々とこなし、真衣は定時で退社した。

約束通り、亮とふたりで駅前のイタリアン居酒屋でカクテルを一杯だけ飲んで食事をし、そして二十二時過ぎの今、やっと家に帰ってきたところである。

柊哉の帰宅はまだこれからで、真衣は誰もいない廊下で大きなため息をついた。

(まさか亮に告白されるなんて……。疲れた。ひとまずシャワーを浴びよう)

広い浴室で温かな湯を浴びつつ、イタリアン居酒屋でのやり取りを思い返す。

ピザとパスタとサラダを分け合い、亮は赤ワイン、真衣はモスコミュールを飲んだ。
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