183日のお見合い結婚~御曹司は新妻への溺甘な欲情を抑えない~

やけにそわそわと落ち着かない亮に、どうしたのかと尋ねたら、急に真面目な顔をして『俺と付き合ってほしい』と言われたのだ。

亮と出会ったのは入社式で、二十二歳の時のこと。

新入社員はすぐに部署には配属されず合同研修を受けねばならないのだが、これが精神的に追い込まれるような、なかなかハードなものであった。

新入社員全員が憂鬱な顔で過ごしていたけれど、亮は明るく元気で、周囲を楽しませようとしていたように思う。

そんな亮に真衣も助けられ、あの頃のことは今でも感謝している。

あれから五年半。真衣を好きになったのは自然に……という話であったが、片思いの期間は三年ほどと聞いて、真衣は己の鈍感さに愕然とした。

振り返ってみれば、自分との接触の機会をなんとか増やそうとしていた彼の努力に、次々と思い当たった。

(三年の片思いは長いよ。もっと早く言ってほしかった……)

そう思うのは、結婚する前なら亮の申し出を受け入れたからではない。

早めに断ることで、苦しい片思いの期間を短くしてあげられたのに……と思うからである。

真衣にとって亮は同期で友人だ。

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