183日のお見合い結婚~御曹司は新妻への溺甘な欲情を抑えない~
最後のメニューは前々から決めている。

柊哉の好物の肉じゃがだ。

五人分ほども作ったのは、冷蔵庫に入れておけば、数日間は食べられると思ってのことだ。

他にも日持ちしそうな総菜をあれこれ作り、密閉保存容器に入れておいた。

今日の分の食事をダイニングテーブルに並べる。

肉じゃがと、しめじと油揚げの炒め物、いんげんの胡麻和えなどのおかずが五品。

ご飯と味噌汁は柊哉の顔を見てから、よそおうと思う。

テーブルを見て、最後の晩餐に相応しくない庶民的なメニューだと思ったが、特別感のないこういう料理の方が柊哉の口に合うと知っている。

帰宅してからハイスピードで十品もの料理を拵えたので、真衣の額には汗が浮かび、それをティッシュで拭いた。

その時、柊哉が帰宅した音が聞こえた。

約束通り、十九時半である。

玄関まで小走りで出迎えれば、「ただいま」と言った彼が、クスリとした。

「なに慌ててるんだよ」

「そうだよね。走る必要なかったかも」

真衣は照れ笑いし、柊哉の手から通勤鞄を受け取った。

「なんだよ。今日は随分と妻らしいな」

「最後くらいはね」

「そうか……」

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