183日のお見合い結婚~御曹司は新妻への溺甘な欲情を抑えない~
いつもはさっさと済ませる夕食を、ゆっくりと一時間もかけて食べていた。

この時間が永遠に続いてほしいと願っても、お腹は膨れ、皿も茶碗も空になる。

真衣は意識して笑顔をキープしながら立ち上がり、食器を流し台に下げた。

洗おうとスポンジを手に取ったら、隣にきた柊哉に「やらなくていい」と言われた。

「時間がない。食器は後で俺が片付ける。やるべきことをやってしまおう」

「うん……」

(柊哉はとっくに覚悟が決まっているんだ。そうだよね。引き延ばしたって意味がない。わかってる……)

食器を下げた後のダイニングテーブルに置かれたのは、ダウンロードした離婚届の用紙と印鑑とペン。

柊哉が用意したもので、証人欄には見知らぬ男女のサインがされていた。

聞けば啓介にサインを断られ、仕方なく証人代行業者なるものに依頼したそうだ。

先ほどまで会話を弾ませていた席に、真衣は無言で座り直し、柊哉と向かい合う。

胸の痛みはピークを迎えようとしていたが、笑みを崩すまいと必死に耐えていた。

柊哉が先に記入する。

ペン先を紙に向けた彼は一度目を閉じ、息を吐く。

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