183日のお見合い結婚~御曹司は新妻への溺甘な欲情を抑えない~
(案外、せいせいしているのかも。気兼ねない独り暮らしにやっと戻れると、ホッとしているのかも……)
柊哉が先に玄関を出ていき、真衣は振り向いてこの家に別れを告げる。
「二度と味わえないセレブな住環境。半年間、お世話になりました」
マンションの通路に出て、エレベーターで地下駐車場へ。
柊哉の二台並んだ高級車の白い方に乗り込むまで、無言が続いていた。
「真衣、シートベルト」
「あ、ごめん。忘れるところだった」
心はまだ離婚の苦しみの中にいる。
他のことに気を回す余裕のない真衣に対し、左隣の運転席に座る柊哉は落ち着き払って見えた。
エンジンをかけ、車は地下駐車場からスロープを上って地上へ。
雨は変わらず結構な勢いで降り続いており、フロントガラス上をワイパーが忙しなく動いても視界はすぐにぼやける。
音楽もラジオもない静かな車内に耐え切れず、真衣はなにか話さなければと口を開く。