183日のお見合い結婚~御曹司は新妻への溺甘な欲情を抑えない~
「うん。そう言ってもらえると私も嬉しい。数日間は食事に困らないように、冷蔵庫に作ったお惣菜を入れてあるから。肉じゃがもね。その後は、自炊を頑張って」

「作り置きまで用意してくれたのか。ありがとう……」

真衣も柊哉と同じように微笑んでいるが、自然な笑みでないのは自覚している。

これが精一杯。

何度押し込めても迫り上がってくる切なさと闘いながらのものであるなら、上出来だろう。

「私もありがとう」と、今度は真衣がお礼を言う。

「俺、お前になにもしてやれなかったけど?」

「服にバッグに靴、この指輪も、たくさん買ってもらった」

会社内では外していた結婚指輪を、自宅に帰ってからは指にはめていた。

それを眺めてから、そっと外してポケットに入れる。

柊哉の視線は指輪のない真衣の左手に留められており、「金で買えるものなんか……」と呟いて口を閉ざした。

もっとなにかしてやりたかったと思っていそうな彼を励ますように、真衣は努めて声を弾ませる。

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