183日のお見合い結婚～御曹司は新妻への溺甘な欲情を抑えない～

「なにしてるのよ。濡れるから早くおいでよ」

真衣がもう一度呼びかけたら、肩を震わせた彼が顔を上げて、キッと真衣を睨んだ。

「早く、だって……？」

「え？」

「なぜお前は、そんなにスッキリと割り切った態度でいられるんだ。俺だけか？　胸が張り裂けそうに痛むのは」

振り絞るように吐き出された彼の本音に、真衣は目を見開き、息をのむ。

柊哉は泣いていた。

雨のせいではなく、真衣に向けられた鋭い瞳からは、確かに露が溢れている。

涙声で叫ぶように、彼は気持ちをぶつけてくる。

「なぁ、狂いそうなほどに愛しているのは俺だけなのか？　お前は俺に惚れてくれないのか!?」

「柊哉……馬鹿……」

真衣の視界も滲み、文句の言葉が震えて掠れる。

今まで抑えてきた感情が、堰を切ったように涙とともに溢れだした。

たまらず駆け出して、愛しい彼の胸に飛び込む。

「遅いよ、言うのが。私だって苦しんでいたんだから。柊哉は私に愛情がないと思っていたから、別れるしかないと諦めてた。お金なんかいらない。離婚したくないよ、私……」

ぎゅっと強く抱きしめられて、安堵の吐息が耳にかかった。