183日のお見合い結婚~御曹司は新妻への溺甘な欲情を抑えない~
そう言った勲と、嬉しそうに微笑む絹代に見送られた真衣は、副社長の後について座敷を出た。

案内板に従い通路を進んで庭へ下りる。

それほど広くはないが、桜に梅、こぶし、もみじや銀杏など季節ごとに色を楽しめる木々が植えられ、ひょうたん形の池には丹塗りの太鼓橋まで架けられている。

なかなか美しい日本庭園だ。

無言で進む副社長が、敷石が並んだ池の縁で足を止めた。

他に散策中の人はなく、餌がもらえるかと寄ってきた錦鯉を並んで眺める。

「とんでもないことになりましたね。どうやって祖父たちを説得しましょう?」

そのように真衣から切り出したが、彼は「ああ」と言ったっきり、じっと水面に視線を止めて口を開かない。

真衣は鯉から彼の横顔に視線を移す。

風にそよぐ前髪が日差しを浴びて輝いている。

思案に耽る表情は憂いを帯びて見え、大人の色気を感じさせた。

思わず見惚れた真衣だが、心をときめかせることはない。

(乙女漫画に出てくるヒーローみたいにいい男だけど……見た目だけというのが、非常に残念)

やがて副社長は考えがまとまったようで、真衣と視線を交える。

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