183日のお見合い結婚~御曹司は新妻への溺甘な欲情を抑えない~
けれども数秒して、口元が緩んだかと思ったら、急に笑いだした。

(なにがおかしいの……?)

腹を抱える彼に真衣が戸惑っていたら、ひとしきり笑ってから、切れ長の美麗な目が三日月に細められる。

「俺に向かってそこまで言えるとは、度胸があるな。そういう奴は嫌いじゃない。うまくやれそうな気がしてきた」

「私の話、聞いてました? 結婚しないと言ったんですけど」

「まぁ、聞け」

副社長はスラックスのポケットに片手を入れ、くつろいだ姿勢で説明する。

それは、契約結婚という提案だ。

「離婚前提で入籍しよう。期間はそうだな……半年。それだけ一緒に暮らしても、お互いに好きになれなかったと言えば、祖母も納得してくれるだろう。もちろん、夫婦となってもお前に手は出さない。結婚を公にもしない。そうすれば親戚や社内の者たちに面倒な説明もいらないし、離婚後も今まで通りの生活が送れるだろう」

「お試し結婚、みたいなもので納得させようというんですか? 相性が悪いとわからせたいなら、入籍しないで一緒に住むだけでいいと思いますけど」

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