183日のお見合い結婚~御曹司は新妻への溺甘な欲情を抑えない~
桜とうぐいす、菜の花をかたどった可愛らしく雅な生菓子だが、それよりも目を引くものが座卓の真ん中に置かれていた。

A3サイズの用紙に枠線がたくさん引かれたそれは……婚姻届け。

襖を入ったところで並んで立っている真衣と柊哉は、思わず顔を見合わせる。

「抜かりない……柊哉の言った通りみたい」

「だろ。そういう人なんだ」

小声で話すふたりを見て、絹代が両手を合わせて声を弾ませる。

「まぁ、すっかり打ち解けて。やっぱり私と勲さんの孫だわ。相性がいいのは最初からわかりきっていたことよ」

それを聞いた真衣の祖父は、照れたように皺だらけの顔を赤く染めている。

「さあさあ、ふたりとも座って。婚姻届けに記入してちょうだい」

もとの座椅子に腰を下ろした柊哉が、まずはペンを持つ。

サラサラと無感情に記入を終えた彼に対し、次に婚姻届けを渡された真衣は、数秒固まる。

(本当に書いていいのかな……)

結婚は人生の一大事。

当然の迷いが生じたが、一千万円の札束が頭に浮かんだら、なめらかにペンが走った。

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