183日のお見合い結婚~御曹司は新妻への溺甘な欲情を抑えない~
そのネクタイが一風変わったものであった。

光沢のある紺色の生地に、素材違いで同色の布地が三角に縫い付けられたデザインなのだ。

『そのネクタイ、変じゃない? つぎはぎみたい』

思ったことをそのまま伝えたら、柊哉に睨まれた。

『これはイタリア製一流ブランドのものだ。春の最新作。見たことのないデザインだから、そう思うんだろ。自分の物差しで測るな』

たしかに真衣にネクタイの良し悪しはわからないので、彼の反論を『ふーん』と聞き流した。

けれども、その態度も彼の癪に障ったらしく、今度は真衣が指摘された。

『お前のオフィススーツ、どこのブランドだ? 生地が安そうだな。縫製も雑』

『ブランドものじゃないもの。仕方ないでしょ、私はあなたと違って貧乏なの』

『うちの給料、悪くないはずだぞ。漫画本ばかり買ってるからだろ』

『そうだよ。それのどこが悪いの? なににお金を使うかは私の自由』

『口の減らない女だ……。次の日曜、時間を空けておけ。お前の服を買いにいくぞ。俺の妻が安物を着るな』

買ってくれるのはありがたいと思ったが、上から目線の彼に、やはり反論せずにはいられなかった。

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