183日のお見合い結婚~御曹司は新妻への溺甘な欲情を抑えない~
「昨日はパスタだったから、今日は定食みたいなのがいい」

「じゃあ、小戸屋だね」

開放中のドア前で、ふたりは足を止めて会話していた。

真衣は廊下側に背を向けている。

すると、後ろから肩に手をかけられ、軽く横に押された。

「じゃ……失礼。西谷さん、通してもらえるかな」

肩越しに振り向けば、今朝も見た顔がそこにある。

好青年風の笑みを浮かべた柊哉に、真衣は思わず眉を寄せた。

(今、邪魔って言おうとしたよね。和美の前ではいい人ぶりたいんだ。ふーん)

「失礼しました」

すぐに道を開けた真衣だが、彼を困らせてみたくなり、ニッコリ笑って言葉を足す。

「芹沢副社長、今日のネクタイ、素敵ですね。イタリア製一流ブランドの春の新作ですよね?」

柊哉は昨日と同じネクタイを締めている。

真衣が“つぎはぎ”と言ってしまった、あのネクタイだ。

一瞬真顔になった柊哉だが、大げさなほどの笑みを作ると、爽やかな声音で切り返す。

「よくわかったね。西谷さんがメンズファッションに詳しいとは知らなかった。褒めてくれてありがとう。君も、そのスカート、似合ってるよ」

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