183日のお見合い結婚~御曹司は新妻への溺甘な欲情を抑えない~
それだけ言うと、柊哉は真衣から離れ、企画部の部長デスクに向かって歩いていく。

直接指示をしたいことがあるのだろう。

他の重役と比較してフットワークの軽い柊哉は、呼び出さずに自ら足を運ぶことが多いようだ。

均整の取れた彼の後ろ姿を見送る真衣は、呆れのため息をこぼす。

(しれっと嘘をついた。スカートが似合ってるって、心にもないことをよく言う。外面と家での態度のギャップが激しい男……)

そのように批判していたら、「真衣、どうしたの?」と和美に心配された。

「熱でもある?」

「ないよ」

「じゃあ、今のなに? 媚びるなんて真衣らしくない。副社長を狙うことにしたの?」

彼がいい男だという話題は、女性社員の間でよく上がる。

けれども真衣がその話題に食いついたり、副社長に積極的に話しかけたりといったことがこれまでになかったので、和美は驚いたようだ。

「狙ってないよ」

サラリと言って、先立って廊下を歩きだせば、隣に追いついた和美に顔を覗き込まれた。

「なにか隠してるでしょ」

「うーん、どうだろ」

「否定しないんだ。これは小戸屋で尋問だね」

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