183日のお見合い結婚~御曹司は新妻への溺甘な欲情を抑えない~
「後妻ではない。詳しいことは土曜に話すから。俺も風呂に入ってくる」

立ち上がった柊哉を真衣が、じっと見上げた。

「うん。ごゆっくり」

回答を先送りにされても、引き止めずに見送ってくれるのがありがたい。

“妾の子”、陰でそう揶揄されたことが少年時代にあった。

(真衣はどう思うか……)

真衣に話そうと決めたのは、自分を正しく理解してもらえそうな気がしたからだ。

夫婦になって、たったの一か月だというのに、期待している自分を不思議に思った。

(大丈夫だろ。聞いたからといって、真衣なら態度を変えることはない。哀れみも気遣いもいらない。そういうのは、かえって俺を苦しめるだけだと、真衣はきっとわかってくれる……)

一抹の不安は心の隅に寄せて自分にそう言い聞かせると、柊哉はリビングを出ていった。


土曜の早朝。

ふたりは、花や供物、線香などの墓参セットを携え、柊哉の車で出かけた。

空はパステルで塗ったように青く澄み渡り、柔らかな朝日が車内に差し込む。

柊哉は車を二台所有しており、どちらも輸入車だ。

今運転しているのは高級車を代表するような車種で、車体は白。

< 90 / 233 >

この作品をシェア

pagetop