183日のお見合い結婚~御曹司は新妻への溺甘な欲情を抑えない~
「いや、逆。腫れ物に触るように大事にされた。妾の子だと俺を馬鹿にしたのは、転校先の級友の一部。たぶん悪気はあまりない。深く考えず、親の受け売りで新しく知った言葉を使ってみたかったといった感じだったな」

「悪気がないからって、許せないよ」

「俺が傷ついたのは、そういう言葉より、気遣ってくれる新しい家族の方だった。馬鹿にされる方がマシ。俺の方が優秀だったから、勉強やスポーツで見返してやれた。だが、気遣われるのは……」

柔らかい針のむしろに座らされているようだったと、柊哉は振り返る。

今はお袋と呼んでいる父の妻と、半分血の繋がった姉は、柊哉にとても親切だった。

しかし、その裏に、本音が透けて見えていた。

本当は家族に迎えたくないが仕方ない。柊哉の父が、跡取りとして育てろというのだから、大事にしなければ。考えてみれば、不憫な子だ……そのような同情や我慢を、柊哉は幼いながらに感じ取っていた。

家族に親切にされるたびに、引き取ってくれた感謝と申し訳なさが込み上げる日々は、柊哉の心を蝕んだ。

自分は厄介者で生まれてこなければよかったと、ひとり泣いた夜もあった。

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