183日のお見合い結婚~御曹司は新妻への溺甘な欲情を抑えない~
だから柊哉は、今でも家族が苦手だ。

そこまで話すと、真衣は「ん?」となにかに気づいたような声を出し、質問する。

「絹代さんも苦手なの? お見合いの日の柊哉は、かなりのおばあちゃん子に見えたけど」

「祖母は別。心から家族だと思えるのは、亡くなった母さんと、おばあちゃんだけだ」

祖父母の住まいは、同じ敷地内の別棟にあった。

渡り廊下で繋がっていたので、一緒に暮らしていたと言っていいだろう。

祖父は病を患い入退院を繰り返していたので、思い出に残るような触れ合いはなかったが、絹代は柊哉を構ってくれた。

柊哉が間違ったことをすれば叱り、手伝いをさせ、そして……真夜中に柊哉がひとりで泣いていたら、なぜか部屋にやってきて抱きしめてくれたのだ。

『柊哉はひとりじゃないのよ。私の可愛い孫。側にいるから安心してお眠りなさい』

その言葉には確かな愛情が感じられた。

父は不在がちで、母や姉にはまるで客人のように丁寧に扱われた家の中で、絹代だけは本当の家族と思って柊哉に接してくれたような気がする。

絹代に対しては申し訳ないという思いにならず、純粋に感謝することができた。

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