183日のお見合い結婚~御曹司は新妻への溺甘な欲情を抑えない~
けれども、絹代にも全てをさらけ出したことはない。
迷惑をかけているのだから、せめていい子でいないと……そのように家庭内で振る舞い、品行方正で優秀な跡取りという顔を演じていたからだ。
きっと絹代は、誠実で爽やかな好青年に育ったと思っていることだろう。
全てを聞いた真衣は、先ほどとは違い、「ふーん」と気のない返事をした。
赤信号で停車したので、彼女の方に振り向くと、あくびまでしている。
「退屈な話を聞かせて悪かったな」
呆れて嫌味を言えば、真衣が軽く笑った。
「聞き終えたんだから、気を抜いたっていいじゃない。これでも緊張していたんだよ。もったいぶって四日も間を空けるから、どんな秘密があるんだろうと思って。それで聞いてみたら、そっか、という感じ」
「随分、適当な感想だな」
「可哀想だと言ってほしかったの?」
「いや……」
そうではない。では、なんと言ってほしかったのか。
それを考え始めた柊哉に、「私、思うんだけど」と真衣が続きを話す。
「当事者でもない他人に哀れまれたら、自分は人より可哀想なんだと思ってしまいそう。私なら嫌だな。だから感想は言わないよ」
迷惑をかけているのだから、せめていい子でいないと……そのように家庭内で振る舞い、品行方正で優秀な跡取りという顔を演じていたからだ。
きっと絹代は、誠実で爽やかな好青年に育ったと思っていることだろう。
全てを聞いた真衣は、先ほどとは違い、「ふーん」と気のない返事をした。
赤信号で停車したので、彼女の方に振り向くと、あくびまでしている。
「退屈な話を聞かせて悪かったな」
呆れて嫌味を言えば、真衣が軽く笑った。
「聞き終えたんだから、気を抜いたっていいじゃない。これでも緊張していたんだよ。もったいぶって四日も間を空けるから、どんな秘密があるんだろうと思って。それで聞いてみたら、そっか、という感じ」
「随分、適当な感想だな」
「可哀想だと言ってほしかったの?」
「いや……」
そうではない。では、なんと言ってほしかったのか。
それを考え始めた柊哉に、「私、思うんだけど」と真衣が続きを話す。
「当事者でもない他人に哀れまれたら、自分は人より可哀想なんだと思ってしまいそう。私なら嫌だな。だから感想は言わないよ」