元カレ社長は元カノ秘書を一途に溺愛する
「杏奈さん、桃は好きかい?」
「はい?・・・はい」
「なんだよ、いきなり。」
瑠衣の父がラフな格好に白いフリフリのエプロンを着ていることに、杏奈は笑いそうになるのを必死にこらえた。

「だから言っただろ?緊張に値するような人じゃないんだよ、家では。」
瑠衣がそっと杏奈の耳元で話す。
「いやー、桃なんて初めて剥いてるから」
「手伝います」

杏奈はすぐに瑠衣の父の元へ向かい、桃をむくのを手伝った。

不器用な瑠衣の父がむいた桃を見て「食べるとこないじゃん」と笑いながら瑠衣もスーツのジャケットを脱いでキッチンに立っている。

「いやーこうして誰かがいるっていいな」
妻を亡くしてから家政婦や運転手意外誰もいないひろい家に一人の瑠衣の父が漏らした言葉に、杏奈は気持ちを察した。
< 227 / 330 >

この作品をシェア

pagetop