元カレ社長は元カノ秘書を一途に溺愛する
「ずっとつらかった。寂しかった。悲しかった。会いたかった・・・。」
今でもその時の気持ちを思い出すだけで泣きそうになる杏奈。
泣かないように瑠衣の方を見ずに話しをする。

「瑠衣と一緒に留学する未来を夢見ながら、つらいことがあっても、想像してたの。瑠衣と一緒に私の心はあの時留学したんだ、一緒に行ったんだって。」
「杏奈・・・」
「バカみたいでしょ?」
少し微笑みながらも潤んだ瞳の杏奈。

「でも、そうしないと生きていられないくらい・・・つらかった・・・。」

病気の母から離れた父。
自分が支えるしかないと必死だった。
誰にも頼れず。
何度も生死をさまよう母の隣で恐怖に体を震わせながらいた日々を生き抜けたのは、乗り越えられたのは、瑠衣の存在がずっと心にあったからだ。
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