元カレ社長は元カノ秘書を一途に溺愛する
娘の未来の旦那様へ

幼いころ、娘は体が弱くて喘息がひどく何度も入退院を繰り返すような子でした。この子が元気に大きくなってくれるのかと主人と心配した日々が今では懐かしく思います。

体の弱さをカバーするかのように娘は強がりで不器用で、自分の範囲以上にがんばりすぎて時々壊れてしまいそうになるほど、急ぎ足で前に進もうとするところがあります。体が丈夫になってもその性格は変わらず、いつも何かに追われているかのように自分を追い込む癖がまだあります。

そんな時は黙って抱きしめてあげてください。
それだけで、あの子は肩の力を抜いて、壊れる前に休むことを思いだせると思います。
最も効果的なのは少し落ち着いてからあの子の好物をあげることです。

娘は母親である私が病気になってから、全力で私をサポートしてくれました。
自分のことよりも100%私のことを優先してくれました。不安な様子もつらそうな様子も、大変そうな様子も何一つ見せることなく、いつも私を笑顔で支えてくれたんです。
心の優しい娘です。優しすぎる娘なんです。
母として、不甲斐ないと思っていますが、あの子だからこそ私は生きる希望を見失わず、心から娘がもう一度笑えるように頑張らなくてはと思い病気と闘う力をもらいました。

私に力がなく、結局娘には何もしてあげられないまま、そばにいられず、つらい思いしかあげられないことが母としての一番の後悔です。

娘の未来の旦那様。
どうか娘を幸せにしてあげてください。多少のわがままや至らなさは多めに見てあげてください。あの子はいつだって精一杯やろうとするはずです。
そして、心から笑顔で過ごせるような家庭を娘と築いて行ってください。
家事も決して上手ではない娘ですがそこは、愛する人の存在が成長させてくれると思います。
どうかどうか、娘を、よろしくお願いします。
叶えてあげられなかったことをあなたに委ねるようで心苦しいですが、それでもお願いします。
娘を幸せにしてあげてください。娘の笑顔を守ってあげてください。

どうぞ、よろしくお願いします。

杏奈の母より
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