元カレ社長は元カノ秘書を一途に溺愛する
「お茶って飲んでいいのかな。水ならいいか。でも冷たいのは悪いか。」
毛布を掛けてから瑠衣はキッチンへ向かいぶつぶつと話しながらコップを手にしてうろうろする。
「大丈夫だよ。まだ決まったわけじゃ」
杏奈が瑠衣の方へ行こうとソファから立ち上がろうとすると「こらっ」とキッチンから瑠衣が杏奈の方を見た。
「座ってろ。動くな。頼むからじっとしてろ。」
とすがるような目で杏奈を見る瑠衣。

その動揺ぶりが、今まで見たことのないくらい大きくて、愛らしくて杏奈は笑いながらもう一度ソファに座りなおした。

結局杏奈の手に渡されたのはマグカップに入ったお湯・・・

ただでさえ入浴して、ドライヤーで髪を乾かして、毛布に体を巻かれている状況で、かなりあつい杏奈。むしろ冷たい水が飲みたいと思いながらも「ありがとう」とマグカップを受け取った。

「俺薬局行ってくるから。動くな。ここにいろ。動くなよ。何もするな。なんかあったら携帯に電話しろ。」
慌てた様子の瑠衣は杏奈に言いながらばたばたと寝室に向かい着替えを済ませる。
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