元カレ社長は元カノ秘書を一途に溺愛する
「明日でもいいんじゃない?仕事が終わってからでも。」
「ダメに決まってんだろ。何言ってんだ?」
杏奈の言葉に、着替えを済ませた瑠衣が信じられないという表情で言う。
「じゃあせめて髪乾かしてから行って」
「俺は大丈夫だ。」
「だめ」
杏奈の身支度は完璧なのに、瑠衣はまだ髪が濡れている。

「いいから。それどころじゃないんだよ。」
「瑠衣」
「大丈夫。そのうち乾く。」
季節は冬。かなり寒い。お風呂から上がったばかりで風邪をひくことが心配な杏奈は奥の手を使った。

「もしも妊娠していて、瑠衣が風邪ひいてうつったらどうするの?」

究極の一言に瑠衣が黙る。

そして静かに浴室へ向かった。少ししてドライヤーの音が聞こえて来た杏奈は、リビングでくすくすと笑った。
< 310 / 330 >

この作品をシェア

pagetop