元カレ社長は元カノ秘書を一途に溺愛する
武藤製薬に入社するとき、正直、瑠衣のことが頭に浮かんだ。
でも、まさか瑠衣が製薬会社の跡取り息子とは思ってもみなかった。

そもそも、杏奈が製薬会社を選んだわけではなく、杏奈にはその時ある事情があり、なるべく好条件の会社にすぐにでも入社する必要があった。

過去に想いを馳せている自分にはっと気づいた杏奈は慌てて仕事用のバックを手にして部屋を出た。

走って階段を降りると、黒のベンツに寄りかかるスーツ姿の瑠衣が立っていた。

身長が190㎝近くすらっとした体型にかなりスーツが似合っている。
思えば瑠衣がスーツを着ている姿を見るのははじめてに近い。

タイトなスーツを着こなす瑠衣に、大人の魅力を感じた杏奈は、思わず目をそらしそうになった。

『ガツッ！』「あっ」
動揺して最後の階段を踏み外してバランスを崩した杏奈の元へ、いつの間にか近づいていた瑠衣が咄嗟に杏奈の体を抱きとめる。
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