音楽を捨てた理由
歌ってみたの音源を消されたり、別のアカウントを作ってTwitterやネットにアンチを書き込まれたり、心音はどうしてみんながそんなことをするのかわからず、戸惑うばかりだった。

しかし、ライブでは心音に優しい笑顔を向けてくれた。ステージに立つ時だけ、一緒に動画を撮る時だけ、心音の存在は認めてもらえた。

「このままあたしが我慢すればいいんですよね……」

そう森尾に心音は去年相談した。すると、森尾は何故か泣き出しそうな顔をしてハルを強く抱き締めたのだ。

「ごめん、気付いてあげられなくて……」

そして、辛かったらもう逃げてもいいこと、リスナーのためにここにいることで本当の気持ちを殺さなくていいこと、泣いてもいいこと、自分を頼ってほしいことなどを話してくれたのだ。

「……森尾さんは、あたしの味方?」

「そうだよ」

森尾の優しい笑顔に心音は泣き崩れ、それからしばらくして歌い手を引退した。
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