捨てられママのはずが、愛し尽くされています~冷徹社長は極上パパ~
 自分の両耳に手を当て、思い切り首を振った。聞きたくない。もう一度聞かせてほしい。信じたくない。信じたい。この人を否定したい気持ちと、応えたい気持ちとで頭の中が黒く塗り潰されていく。

「私はもう、あなたに期待しないって決めたの……!」

 自分が自分でなくなるような、足元から崩れ落ちてしまうような、そんな不安定な感情を恐れてその場を逃げ去る。

 涼さんは追いかけてこなかった。

 どんな顔で逃げた私を見ていたのかも、わからなかった。



 逃げ出したのは寝室だった。

 なにも知らず目を閉じた鳴を見つめてから、私もベッドに倒れ込む。涼さんの寝場所は共有スペースに用意してある。だから一緒に眠ることにはならないし、きっとここまで追いかけてもこないだろう。

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