捨てられママのはずが、愛し尽くされています~冷徹社長は極上パパ~
 これでよかったのだろうかと思う気持ちもなくはなかったけれど、ここまで許したのならもう無理に涼さんを拒絶しなくてもいいという思いの方が大きく、心穏やかな日々を過ごしている。

 私がそんなふうに変わったからか、なんとなく涼さんの対応も柔らかくなった。もともと冷たい人ではなかったけれど、いろんな意味で遠慮がなくなった気がする。

 現に――今もコーヒーを置いた私の腕を引いて抱き寄せてきた。

「お仕事するんじゃ?」

「五分だけ付き合え」

「それを休憩って言うんだと思うけど」

「いいから」

 膝に乗せられ、後ろからぎゅっと抱き締められる。お腹の前に置いた手がときどきくすぐるように動いた。

 ふう、と聞こえた溜息が耳元で響く。また私の肩に顎を乗せると、涼さんは人の手で遊び始めた。

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