捨てられママのはずが、愛し尽くされています~冷徹社長は極上パパ~
 本当の家族になれる瞬間は、すぐそこまで来ていると思いたかった。



 車でおよそ一時間半かけ、ようやく懐かしの実家に到着した。涼さんの家に比べれば恥ずかしくなるほど古く、汚らしい家だ。一軒家ならばもう少し外観に気を遣えばいいのに、塀の一部が欠けていたり、雑草が好き放題伸びていたりと案内することを後悔する。

 家の前に立ち、キーホルダーのついた鍵を取り出す。ドアを開けようとした手が震えた。

「翠」

 なかなか開けられずにいると、横から声をかけられる。

「俺がいる」

 ドアノブを掴んだ手を涼さんが包み込んでくれた。そのぬくもりが私を安心させてくれる。

「ありがとう」

 震えていたのが嘘のように、ぐっと力を込めてドアを開く。

「お母さん」

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