捨てられママのはずが、愛し尽くされています~冷徹社長は極上パパ~
 胸が痛かった。これでも私を産んだ母親なのだから。

「帰ってくるならくるでもうちょっと役に立ったらどうなの?」

 あ、と声を上げる前に母が手を振り上げる。

 この感じは知っていた。母はいつも機嫌が悪くなると私を殴る。蹴られたことだってあった。大人になってからはさすがになくなっていたけれど、幼少期に刷り込まれた痛みと恐怖が鮮明によみがえって――。

「なんの真似だ」

 無意識に身を庇っていた私に痛みはなかった。

 涼さんが片方の手で私を抱き寄せ、もう片方の手で母の振り上げた腕を掴んでいる。

「あんたになんの関係があるのよ。翠はうちの子なんだから、どう扱ってもあたしの自由でしょ」

「翠は俺の妻だ」

「痛っ……!」

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