捨てられママのはずが、愛し尽くされています~冷徹社長は極上パパ~
 いつものような命令口調ではなかったことが、余計に私の胸を突いた。泣かないでほしいと言われたのに、涼さんの胸にすがって泣いてしまう。

 声をあげて子供のように泣けたのは、生まれて初めてのことだった。



 車はまっすぐ家に向かわなかった。実家から三十分ほどの海岸に辿り着いたところで停車する。

「……翠」

 ようやく落ち着き始めていた私を、気遣わしげな声が呼ぶ。

「大丈夫か?」

「……うん、ありがとう」

 芽衣子には夕方、鳴を迎えに行くと伝えている。だからこんな時間を用意してくれたのだろう。

 膝の上に置いていた手を涼さんに握られた。

 いつの間にかこんなにも自分の手が固く強張っていたことに今、気付いた。

「……結婚式の日、電話していただろう」

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