捨てられママのはずが、愛し尽くされています~冷徹社長は極上パパ~
 突然なにを言い出すのかと顔を上げる。後悔を滲ませた瞳が私を見つめていた。

「あのときお前は――母親に話を合わせていたんだな」

 ゆっくり、あの日のことが思い出される。

 窓の外から聞こえる波の音が私を過去へ連れて行った。



 式の準備をしていた私は、スマホの画面を見つめていた。

 もうすぐ涼さんと永遠の愛を誓う瞬間がやってくる。けれど、私はそれを家族に――母に伝えていない。

(やっぱりちゃんと言うべき……だよね)

好意的な言葉をもらえるだろうか。それとも結婚など許されないだろうか。

 後者だろうという気持ちはありつつも、やはり期待してしまう自分がいる。

「……もしもし、お母さん」

 意を決して電話をし、こっそり深呼吸した。

『なに、翠? どうしたの、急に』

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