捨てられママのはずが、愛し尽くされています~冷徹社長は極上パパ~
 ――どんなに複雑な感情を抱いていようと、どう思われていようと、家族なのだから。

 そう期待して、化粧台の上に置かれた時計に目を向ける。

 もうすぐ、楽しみにし続けていたその瞬間がやってくる。

 世界で一番幸せな花嫁になるまで、あと少し――。



 三年前の忌まわしいあの日に起きたことを思い出し、思わず声を上げていた。

 口元を押さえて、涼さんを見る。

「あのとき……聞いていたの?」

 涼さんは黙って頷いた。

 母への電話のあと、私はおとなしく控室で待ち続けた。そのあとに自分が捨てられてしまうとは思いもせずに。そしてなぜ捨てられてしまったのか、その理由もわからないまま三年を過ごすことになったのだ。

「私……」

 再会してから涼さんは私にどう接していただろう。

< 264 / 462 >

この作品をシェア

pagetop