捨てられママのはずが、愛し尽くされています~冷徹社長は極上パパ~
 翠に折れた鳴が俺を見上げて不貞腐れたように言った。おとなしい子だと思っていたが、こう見えて結構顔に出るし態度にも出る。そういったところは翠に似ていて、また鳴をかわいいと思った。

「別に気にしていない」

「パパはなるくんのことすき?」

「翠の次くらいには」

「なるくん、いちばんがいい」

 そうは言っても、鳴の一番だって翠だろう。子供からの要求は理不尽だ。

 鳴が謝ったからか、翠がほっと息を吐く。俺を見る目には「鳴をよろしく」とあった。

「気を付けて行ってこい」

「うん、ありがとう」

「迎えは必要か?」

「ううん、大丈夫だよ。……じゃあ、行ってきます」

 靴を履いた翠が玄関のドアに手をかける。

「翠」

 思わずその名前を呼んで引き留めてしまっていた。

「なに?」

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