捨てられママのはずが、愛し尽くされています~冷徹社長は極上パパ~
「俺も鳴が好きだな」

 一度口にしてみると、少し妙な気分になった。初めて翠に伝えたときとは違う、むずがゆいような感覚。気持ちいいとは思わないが、悪くはない。

「なるくんとおててつなご」

「車に乗るまででいいなら」

「うん」

 手を繋いで鳴と外へ出る。つくづく、ここに翠がいないのが残念でならなかった。

 その夜、七時を過ぎた頃に翠が帰宅した。

「ただいまー。ごめんね、遅くなっちゃって。これ、おみやげのケーキ……」

 言いかけた翠がリビングの惨状を見て絶句する。

 見渡す限りの菓子の山。中途半端に開けた袋は床にも散乱しており、個包装の飴やチョコもまきびしのようにばらまかれている。

「なに、これ……」

「パパとね! おかしパーティーしたの!」

「……涼さん、どういうこと」
< 315 / 462 >

この作品をシェア

pagetop