捨てられママのはずが、愛し尽くされています~冷徹社長は極上パパ~
 言いかけたのに唇を塞がれた。柔らかい感触と、私のものではない吐息。少し熱いそれが唇を介して染み込んでくる。

 キスなんてもう何度もされたのに、まだ慣れない気がする。ただ身体の一部と一部を重ね合わせるだけの行為に心が甘く震えて、頬が火照った。

 声を奪われて言えない分、もっと、という気持ちを伝えるように涼さんを抱き締める。涼さんもまた包み込むように私を抱き締めて、また髪を撫でてくれた。

 食むように唇の感触を分かち合い、そしてほっと息を吐くのと同時に離す。先端だけ絡んだ舌が名残り惜しげに私の口の中でさまよっていた。

「涼さん」

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