捨てられママのはずが、愛し尽くされています~冷徹社長は極上パパ~
 鳴とよく似ていて、でも違う猫っ毛の髪をふわふわと触る。この人を撫でる度胸のある人間もそういないだろう。立っていれば百九十近くあり、座っていても人を近付けさせないオーラのある人だからだ。

だけど私は触るし、撫でる。自分がされてうれしいことは人にもした方がいい。実際、涼さんも嫌がる素振りを見せなかった。

「ご飯は?」

「今すぐ食った方がいいならそうする」

「……あ。じゃあ、言い方を変えてもいい?」

「ん?」

「ご飯にする? お風呂にする? それとも私にする?」

 冗談めかして言うと、くっと笑われた。今日の涼さんはずいぶん機嫌がいい。笑わない人というわけではないけれど、ここまで笑顔を見せるのは珍しかった。

「全部でもいいのか?」

「涼さんが欲しいならいいよ」

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