捨てられママのはずが、愛し尽くされています~冷徹社長は極上パパ~
「ああ、池があったね。それもじゃあ、あとで行こう」

「なるくん、いいこにする」

「うん」

 三歳児だと考えたら上出来すぎるくらい上出来だった。こんな慣れない場所に連れてこられたら、走り回って泣きわめいても仕方がないだろうに、物珍しそうに部屋の内装や周囲を観察しているだけでおとなしくしている。

 そうやってなにかを観察する癖は父親の涼さん譲りのもので、よく似た親子であることをこっそり感謝した。

 しばらく待っていると、廊下の方から足音が聞こえてくる。

 間違いなく私たちのいる個室に近付いてきていた。緩みそうになった気を引き締め、ぴんと背筋を伸ばす。

「涼さん、私……」

「俺がいる」

 まだなにも言っていないのに、膝に置いていた手を握られた。

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