捨てられママのはずが、愛し尽くされています~冷徹社長は極上パパ~
 結局、目を合わせられてしまった。気まずさすら感じるくらい期待に満ち溢れている。普段は大型犬のような人なのに、こういうときは尻尾を振った子犬に見えるから恐ろしい。

 いつも通り、白旗を振ることになったのは私だった。

「……かっこいい。ちょっと見とれた」

「少しだけか?」

 微笑したかと思うと、頬を離れた手がグローブに包んだ手を握ってくる。今は指輪をはめていない薬指に触れられ、どきりとした。

「俺はまた惚れ直したのに」

 静かに言われて、悔しいことに死ぬほどときめいてしまった。まっすぐすぎる言葉も態度も慣れたつもりだったけれど、まったくそんなことはなかったと思い知らされる。

 きゅ、と唇を引き結んで、私も涼さんの気持ちに応えた。

「……私だって」

「ん?」

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