捨てられママのはずが、愛し尽くされています~冷徹社長は極上パパ~
 だから、涼さんの疑問にもすぐ答えられなかった。

「俺のことは嫌いじゃないんだろう?」

 探るように問う声が近い。後ろから抱き締められているせいばかりではなく、耳元に顔を寄せられているせいだ。

 頬をかすめた吐息を意識して、お腹の上で組まれた手をどけようとする。それを拒む涼さんとしばらく攻防戦を繰り広げたけれど、最終的には恋人繋ぎの状態にされて敗北した。そもそも手の大きさが違うのだから、負けるのも当然だ。

「涼さんのことは好きだよ。でも、なんで涼さんがそこまで私を好きなのかわからない」

「お前が、お前だからじゃないのか」

 さっきよりもぴったり密着した形で抱き締められ、背中いっぱいに体温を感じる。鳴にくっつかれるときとは違って、涼さんにこれをやられると落ち着かない。

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