捨てられママのはずが、愛し尽くされています~冷徹社長は極上パパ~

「死んじゃうって」

 冗談半分、本気半分の言葉に気が抜けて笑ってしまった。

 私が笑ったことで芽衣子も同じく気が抜けたのか、やっと表情が緩む。

(でも……ちょっとびっくりしたな)

 正直に言うと、捨てられたことを話しても、鳴をひとりで産むと伝えたときも側にいて励ましてくれた芽衣子が、あそこまで激高するとは思っていなかった。

 だからか、私の中の怒りはすっと引いてしまっている。

 むしろ涼さんへの戸惑いが大きい。

 なにせ、あの人は「結婚しよう」と雑なプロポーズをしてきたのだから。

「昨日言ってたこと、本気だと思う?」

「なに、結婚の話?」

「うん」

 涼さんのことは許していないし、信用だってしないけれど、鳴のことを考えれば父親がいた方がいいに決まっている。

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