捨てられママのはずが、愛し尽くされています~冷徹社長は極上パパ~
「財布事情を心配するのは主婦として……母親として当然よ。もしかしたら鳴くんが将来医者になりたいって言うかもしれないんだし、そうなったら翠だけじゃきついでしょ」

「……うん、そうだよね」

「あいつと結婚しろ、って応援してるみたいで嫌だけど」

 ふん、と翠がイライラした様子でコーヒーをひと息に飲み干す。

 私自身が結婚したいかと言われれば、いいえと答える。あの人にまだ気持ちが残っていることを思い知らされたとはいえ、過去の件をなかったことにはできない。信用できない人を夫に選ぶほど愚かな話はないだろう。

(だけど、鳴がいる)

 私の気持ちだけで答えを決めていい話ではない。

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