捨てられママのはずが、愛し尽くされています~冷徹社長は極上パパ~
 鳴は私の問いに答えず、きょろきょろとあたりを見回してから不思議そうに首をひねる。

「パパは?」

「えっ……?」

「パパ、いなかった?」

 無邪気な声には興奮が混ざって聞こえた。

「パパいたの。なるくん、しってるんだよ」

「鳴……」

「どこ?」

 熱があった上に、ほぼ眠っていた鳴は涼さんの顔を見ていない。涼さんもそれは同じで、ちゃんと鳴の顔を見ていないはずだった。それなのに、鳴は涼さんがいたことに気付いている。

「ママ、パパは?」

「……めいちゃんと間違えたんじゃない?」

「めいちゃんはめいちゃんでしょ」

 ああ、と嘆息する。もう誤魔化し切れないのだと悟ってしまった。

 鳴が父親について触れた次の日に保育園で聞いた話を思い出す。

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