捨てられママのはずが、愛し尽くされています~冷徹社長は極上パパ~
「パパはね、とっても忙しいの。今もお仕事してるからいないんだよ」

「なるくん、まってる」

「……会いたい?」

 待っている、と言ったことからもう答えは見えていた。私の方こそ泣きたい気持ちになりながら、もう一度鳴に尋ねる。

「パパに会いたい?」

「うん!」

 鳴の顔が期待に紅潮し、ぱあっと輝く。

 その顔を見て、鳴に必要なのは充分な金銭でも立派な環境でもなく、父親と呼べる人の存在だったのだと思い知らされた。

 私があの人とかかわることを拒んでも、鳴は悲しむだけだろう。それなら私は、鳴のためにこの気持ちを押し殺すしかない。

(――涼さんと結婚しよう)



 その数日後の土曜日、私は涼さんと役所へ来ていた。もちろん目的はひとつである。

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