捨てられママのはずが、愛し尽くされています~冷徹社長は極上パパ~
 当たり前のように涼さんが私の手に触れてくる。

 思わずどきりとするほど優しい手つきが、どうしようもなく鼓動を速めてきた。

 どうしてそんな触れ方をしてくるのか理解できない。また振り払えばいいのに、それができない自分にも困惑する。

「ふたりきりでしたかっただけだ。ウエディングドレス姿のお前を独り占めしたかった」

 くすぐるように指を絡められ、咄嗟に手を離してしまった。

 気安く触れてきた不快感からではない。私が心の奥底にしまいこんだ箱の鍵を開けられそうだと、危機感を覚えたからだった。

 どきどきと心臓がうるさく騒いでいる。今になってこんなことを言われてもまったくうれしくない。それどころか、今更なにを言っているんだと呆れている――はずだ。

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