【短編】ベイビー・ホワイト
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自分の部屋の窓から嫌でも見える隣の玄関。ガチャンとドアが開いた音を敏感に察知した俺の視線は、どうしたってそちらに向いてしまって。
彼女の着ている白いワンピースを、めちゃくちゃに汚してやりたくなった。
「…なあ、本当に行くの」
「行くって言ってるでしょ」
「あ、そ」
駅の方に消えていく背中が、白くて。太陽の光を反射して、眩しい。嫌いだ、あんな女。眩しくて、遠くて、白くて、綺麗で。手が届かないから、嫌いだ。