悪戯 ―イタズラ―
『いいひといないの?』
実家の母から、電話で尋ねられたとき
『いる』と答えた。
彼を、いつか、紹介するつもりだった。
悲しむだろうな、お母さん。
泣かせてしまうかな。
……娘が不倫してるなんて知ったら。
もし、むこうに子供がいたら、諦めていた。
2人きりで会うのを躊躇った。
けど、子供は、いないという。
だったら夫婦仲はとっくに冷めていて、そのうち、私を選んでくれるかも。
そんな淡い期待がないわけでもない。
ただ、本命になるのが自分だなんて。
おこがましい。