君だけが知っている君へ。
プロローグ
20☓☓年。
「なんで私のパパはいないの?」
もうすぐ5歳になる娘が言った。
いつかちゃんと、説明してあげなきゃいけないことは分かっていたけれど……
思っていたよりも早かったな。
「パパはちゃんといるよ」
「どこにいるの?」
「それはね、ママにも分からないんだ……」
なんて説得力の無い言葉だろう。
シングルマザーの私は今年30歳になった。
娘の父親は生きている。
娘は覚えてないだろうけれど、何回か会ったこともある。
だけど一緒に住めない理由が私たちにはあったんだ……。
それを5歳の娘に伝えることが正しいのかどうか、このときの私には分からなかった。