君だけが知っている君へ。
「悠樹って言うんだね。初めて知ったよ」

今日初めて、彼のことを知った。

「知ってると思ってた」

「じゃあ、私の名前知ってる?」

まさか約4年も一緒にいたのに、今更自己紹介をすることになるなんて思ってもみなかった。

悠樹は少し考える素振りをして、

「……ごめん、なんだっけ?」

そう言って、申し訳なさそうな顔をした。

「ケータイ貸して」

私は悠樹のように、ケー番とメアドを登録した。

「心桜ね、改めてよろしく」

「こちらこそ」

そう言って差し出された手を私は握り返した。
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