君だけが知っている君へ。
ジムに着いて悠樹の姿を探した。
けれどどこにも見当たらない……。

仕方なくイヤホンをつけて、動画を見つつエアロバイクを走らせ続けた。

「頑張ってるじゃん」

突然、イヤホンを誰かに外された。
こんなことをするのは1人しかいない。

「悠樹、来てたんだ」

自分でも分かるくらい、会えたことが嬉しかった。
だけどそれを悟られないように少し冷たい態度をとった。

「さっきまで泳いでた。心桜は泳がないの?」

あぁ、そっか。
水泳教室で出会ったのだから、泳いでても不思議じゃない。

「あんまり泳ぐのは好きじゃないから」

「毎日のように来てたのに?」

「ただのストレス発散。運動不足解消のためだよ」

これは本当のこと。

「そうなんだ。俺、もう帰るけど一緒に帰る?」

時計を見ると、午後21時を回ってた。
どうやら私はかなりの時間、集合していたらしい。
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